夏から秋へ季節が移り変わると、
「朝晩になると少し肌寒い」
「空気が乾燥してきた気がする」
「風が涼しくなって、夏とは体感が変わってきた」
と感じる日が増えてきます。
9月前半はまだ真夏のように暑い日もありますが、少しずつ秋らしい空気へ。
そんな秋の季節を、アーユルヴェーダではどのように考えるのでしょうか。
アーユルヴェーダを知るうえで重要なキーワードの一つが、
「ヴァータ(Vata)」
です。
アーユルヴェーダでは、自然界や人の体を「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」という3つの性質、いわゆる「ドーシャ」という考え方で捉えます。
今回はその中でも秋と関係が深いとされる「ヴァータ」に注目。
秋の乾燥や冷たさ、気温の変化をどのように捉え、日々の生活にどう取り入れていけばよいのか、医師監修のもとご紹介します。
そもそも「ヴァータ」とは?
アーユルヴェーダには、
・ヴァータ
・ピッタ
・カパ
という3つの「ドーシャ」があります。
ドーシャとは、アーユルヴェーダ独自の身体や自然を捉えるための概念です。
その中でヴァータは、
「風」と「空」の性質を持つ
と考えられています。
伝統的には、
・軽い
・冷たい
・乾いている
・動く
・速い
・不規則
といった性質と関連づけて説明されます。
例えば秋を思い浮かべてみると、
夏よりも空気が乾燥する。
冷たい風が吹くようになる。
日によって気温が大きく変わる。
こうした特徴が、アーユルヴェーダでいうヴァータの「乾燥」「冷たさ」「動き」と重なることから、秋はヴァータを意識する季節と考えられています。
ただし、これはあくまでアーユルヴェーダという伝統医学における考え方です。
「秋になると必ずヴァータが乱れる」「ヴァータが原因で体調不良になる」という意味ではありません。
日本の9月は「まだ夏」と「秋」が混在する
アーユルヴェーダについて調べると、
「秋はヴァータの季節」
という説明を目にすることがあります。
ただし、日本の9月にその考え方をそのまま当てはめるのは少し注意が必要です。
日本では9月になっても、日中は30℃前後まで気温が上がることがあります。
一方で、
朝だけ涼しい。
夜になると冷たい風が入ってくる。
前日は暑かったのに翌日は一気に気温が下がる。
ということも。
つまり、日本の9月は、
夏から秋へ少しずつ移行している途中
です。
「秋だから温かくしなければ」
と一気に生活を変えるより、
その日の気温や湿度、自分の体感を確認しながら少しずつ調整する方が取り入れやすいでしょう。
ヴァータの反対を意識するという考え方

アーユルヴェーダには、
似た性質は増え、反対の性質を取り入れることでバランスを考える
という特徴的な考え方があります。
例えばヴァータは、
冷たい
乾いている
軽い
動きが多い
という性質を持つとされています。
そこで秋には、その反対となる、
温かい
適度にうるおいがある
落ち着いている
規則的
といった要素を生活の中に取り入れることが伝統的に勧められています。
これを現代の生活に置き換えると、
「寒いからとにかく厚着する」
ということではありません。
例えば、
冷たい飲み物ばかりなら、時々温かい飲み物を選ぶ。
シャワーだけの日が続いていたら、時間がある日に湯船につかる。
忙しく動き続けているなら、夜だけ少しゆったり過ごす。
朝晩だけ冷えるなら、その時間だけ羽織りものを使う。
こうした小さな調整でも十分です。
秋の温活は「体を熱くすること」ではない
ここで「温活」についても考えてみましょう。
温活というと、
厚着をする。
熱いお風呂に入る。
温かいものだけを食べる。
と考える方もいるかもしれません。
しかし、秋の始まりにそれをすると、まだ暑い日にはかえって負担になることがあります。
大切なのは、
暑さを我慢して温めるのではなく、冷えを感じたところを心地よく調整すること。
例えば、
冷房の効いたオフィスでは足元だけ。
朝晩はお腹だけ。
風が冷たい日は首元だけ。
というように、「部分的に温める」方法なら季節の変わり目にも取り入れやすくなります。
アーユルヴェーダの考え方を参考にする場合も、
「ヴァータの季節だから温めなければ」
ではなく、
今日は少し冷たい風を感じるから、一枚プラスしてみよう
くらいの柔軟さがちょうどよいでしょう。

「乾燥」も秋のセルフケアの大切なキーワード
秋になると気温だけでなく、湿度の変化も気になり始めます。
アーユルヴェーダではヴァータに「乾燥」の性質があると考えられているため、秋はうるおいを意識した生活も大切にされます。
例えば、
肌が乾燥しやすくなったらスキンケアを見直す。
室内が乾燥してきたら加湿を検討する。
水分補給を忘れない。
入浴後は肌を保湿する。
などです。
夏は汗やベタつきが気になっていたのに、ある日突然、
「肌がカサつく」
「唇が乾燥する」
と感じることがあります。
季節の変わり目は、昨日までのケアが今日も合うとは限りません。
「今の自分には何が必要か」を確認する
こともセルフケアの一つです。
食事も「夏仕様」から少しずつ切り替える
夏の間は、
冷たい麺類
アイスコーヒー
冷たいお茶
アイスクリーム
など、冷たいものを口にする機会が増えます。
9月になったからといって、これらをすべてやめる必要はありません。
まだ暑い日もあるからです。
ただ、朝晩が涼しくなってきたら、
朝は常温や温かい飲み物にする。
夕食にスープや味噌汁を加える。
温かい料理を一品増やしてみる。
など、少しずつ切り替えてみるのもよいでしょう。
アーユルヴェーダでは、ヴァータの「冷たい」「乾燥」という性質に対し、温かさや適度な油分を含む食事などが伝統的に取り入れられています。
ただし、特定の食品を食べれば体質や病気が改善するという意味ではありません。
栄養バランスを基本にしながら、季節に合わせて食事の温度や調理方法を少し変える、という程度から始めるのがおすすめです。

忙しい人ほど「規則性」を少し意識する
ヴァータには「動き」「不規則」という性質もあると考えられています。
そこでアーユルヴェーダでは、秋には生活リズムを整えることも大切にされています。
とはいえ、
毎日同じ時間に起きる。
必ず同じ時間に食事をする。
毎晩完璧な睡眠時間を確保する。
となると、忙しい生活では難しいこともあります。
そこで、
全部を整えるのではなく、一つだけ固定してみる
のはいかがでしょうか。
例えば、
朝食をとる時間だけ大きくずらさない。
入浴後はスマートフォンを見る時間を少し短くする。
寝る前に温かい飲み物を飲む時間をつくる。
毎晩5分だけゆっくり過ごす。
などです。
「健康のために新しいことを増やす」というより、
慌ただしい一日の中に、少しだけ“いつもの時間”をつくる
と考えると続けやすくなります。
秋こそ「入浴」を見直してみる
暑い夏はシャワーだけで済ませていた方も多いのではないでしょうか。
秋に向かって少しずつ涼しくなってきたら、湯船につかる日を増やしてみるのも一つです。
もちろん、熱いお湯に長く入る必要はありません。
まだ暑い日は少しぬるめに。
涼しい日は自分が心地よいと感じる温度に。
その日の気温や体調に合わせて調整します。
入浴は、
「今日は冷房の中に長くいた」
「今日はたくさん歩いた」
「今日は少し涼しかった」
など、一日の自分の体感を確認する時間にもなります。
温活では、
どれだけ温めたかより、自分がどう感じているか
を確認することも大切です。

朝・昼・夜で「ヴァータ対策」を変えてみる
秋の始まりは、一日の中でも気温差があります。
そのため、朝から晩まで同じことをする必要はありません。
朝は「今日の気温を確認」
朝起きたら、最高気温だけでなく最低気温も確認してみましょう。
朝晩が涼しい日は、薄手の羽織りものを準備。
冷える日は温かい飲み物を選ぶなど、小さな工夫から始めます。
昼は「温活より暑さ対策」
昼間はまだ暑さが残る時期です。
無理に体を温めず、水分補給や適切な冷房使用を優先しましょう。
オフィスの冷房で足元だけ寒い場合などは、全身ではなく部分的に調整します。
夜は「動く時間から落ち着く時間へ」
仕事や家事が終わったら、少しずつ活動量を落としていきます。
湯船につかる。
照明を少し落とす。
スマートフォンから離れる時間をつくる。
こうした「動」から「静」への切り替えも、アーユルヴェーダでいうヴァータの「動き」を意識した生活のヒントになります。
温活アドバイザーとして大切にしたいのは「整えすぎないこと」
温活を意識していると、
「今日は温められなかった」
「冷たいものを飲んでしまった」
と、ルールを守ることが目的になってしまうことがあります。
ですが、9月は気温そのものが安定していません。
昨日は長袖が必要だったのに、今日は半袖。
朝は温かい飲み物がほしかったのに、昼は冷たいものが飲みたい。
それでいいと思います。
私自身も、
「秋になったから○○をする」ではなく、「今日の自分はどう感じているか」で決める
ことを意識しています。
今日は足元が少し冷える。
今日はお腹だけ冷房が気になる。
今日は一日暑かったから温活は控える。
そんな日々の体感に合わせて微調整することが、季節の変わり目には特に大切です。
温活アイテムも「すぐ調整できるもの」を
9月から秋の始まりに温活アイテムを取り入れるなら、
「冬にどれだけ温かいか」
だけで選ぶ必要はありません。
むしろ、
・薄手
・蒸れにくい
・締め付けにくい
・服の下に取り入れやすい
・暑くなったら外しやすい
といった、調整しやすさも大切です。
例えば、
お腹が気になる日は薄手の腹巻き。
オフィスで足元だけ気になる日はレッグウォーマー。
首元に冷たい風を感じる日は薄手のネックウォーマー。
というように、必要な部位だけを覆います。
ミッシーリストでも、シルク腹巻やシルクレッグウォーマーなど、厚着をするほどではない季節から取り入れやすい温活アイテムをご用意しています。
ただし、これらの商品は特定の体調不良や病気を予防・改善することを目的とするものではありません。
日々を心地よく過ごすための温活アイテム
として、その日の気温や体感に合わせて取り入れてみてください。

まとめ|秋のヴァータケアは「温かさ・うるおい・落ち着き」を少しずつ
アーユルヴェーダでは、秋は「ヴァータ」の性質を意識する季節と考えられています。
ヴァータには、
冷たい
乾燥
軽い
動く
不規則
といった性質があるとされ、その反対となる、
温かさ
うるおい
落ち着き
規則性
を生活に取り入れることが伝統的に大切にされています。
とはいえ、9月の日本はまだ暑い日もあります。
無理に温かい服を着たり、冷たいものをすべて避けたりする必要はありません。
朝晩が涼しくなったら一枚羽織る。
足元だけ冷えるなら部分温活をする。
空気の乾燥を感じたら保湿を見直す。
シャワーの日が続いていたら、湯船につかってみる。
忙しい日は、夜に5分だけゆっくりする。
こうした小さな工夫からで十分です。
アーユルヴェーダの考え方を現代の暮らしに取り入れるなら、
「ヴァータを整えなければ」と考えるより、季節の変化に気づき、自分の生活を少し調整するきっかけにする
くらいがよいでしょう。
秋が深まるにつれて、気温も湿度も少しずつ変化していきます。
夏と同じ生活をそのまま続けるのではなく、
「今の季節」と「今日の自分」に合わせたセルフケア
を取り入れていきましょう。
※本記事は、アーユルヴェーダに伝わる考え方を紹介する一般的な健康情報です。特定の疾患の診断・治療・予防を目的としたものではありません。
※「ヴァータ」「ドーシャ」などはアーユルヴェーダにおける伝統的な概念であり、現代医学における診断分類とは異なります。アーユルヴェーダのすべての考え方について科学的根拠が確立されているわけではありません。

〈この記事の監修者〉
上馬塲 和夫
医師・医学博士
広島大学医学部卒業。虎の門病院、北里研究所東洋医学総合研究所などで漢方・東洋医学・統合医療の臨床・研究に従事し、日本初のマハリシ・アーユルヴェーダ認定医師としてアーユルヴェーダの普及・研究にも尽力。現在は蒲田クリニック統合医療研究所所長、虎の門病院・らいふサイエンスクリニック漢方内科外来担当医を務めるほか、日本アーユルヴェーダ協会理事長などを歴任。著書多数。
